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バイオラボの作り方(1) 〜研究室ってどういうところ?早稲田大学岩崎秀雄研究室訪問記〜

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BioClubとは、今後拡大が予想されるバイオテクノロジー領域において、様々な領域の専門家やリーダーが一体となって、新たな価値創造の可能性を追求することを目的とするコミュニティです。BioClubでは現在、様々な実験を行うことのできるバイオラボを設置するための準備を始めています。

その一環として、BioClub運営メンバーでもある早稲田大学先端生命医学研究施設にある岩崎秀雄先生の研究室を訪問し、バイオラボ設立に不可欠な機材や配置の導線等を勉強してきました。その様子をロフトワークのBioClubメンバーである丸山がレポートします。

image1▲岩崎秀雄研究室のあるTWIns

TWIns(ツインズ)とは、東京女子医科大学と早稲田大学による医工融合研究所で、生命科学系の研究室や先端生命医科学研究室を集結させたセンターです。その施設内にある岩崎先生の研究室では、主にシアノバクテリアを用いた研究が行われています。シアノバクテリアとは、池などに存在する藻のような微生物のことです。

image2▲液体培地中のシアノバクテリア

シアノバクテリアは光合成をするのですが、地球上ではじめて『酸素を生み出す光合成』を行ったのがこのシアノバクテリアだとされています。この小さな微生物が現れるまでは、大気中に酸素がほとんど存在しなかったことを考えると、シアノバクテリアのおかげで今の地球環境が存在し、私たちのような酸素を必要とする生物の生存が可能になったと言えます。

image3▲培地上に綺麗に植えられたシアノバクテリア

そのシアノバクテリアは、光合成を行うという性質上時計遺伝子を持っており、岩崎研究室ではこの特性を研究対象とした生物の「時間」に関する研究が多く行われています。シアノバクテリアは、我々の生存にとって不可欠な酸素を生み出してくれただけではなく、人間やその他生物がもつ体内時計のメカニズムを解明するためにも活躍してくれているということです。

また、岩崎先生は上記のような研究室を率いる他、metaPhorest(メタフォレスト)という生命(論)を巡る美学的な実験・研究・制作を行うためのプラットフォームを運営しています。「生命とは何か」という生命科学の命題を巡り、日本画やガラス工芸を専門とするアーティストやデザイナー、生物学の研究者等、多様なバックグラウンドを持つ方々が長期で滞在・探求するオープンなプラットフォームです。研究と制作とを混在させることで、より多義的に「生命」と向き合うことが可能となり、それにより、研究面でも制作面でも新しい何かが生まれるきっかけとなるのだろうと感じます。公開でセミナーも行われているので、皆さま是非参加してみてくださいね。
さて、本題に戻ります。『バイオラボをつくる』上で重要なことは何でしょうか?最先端のマシンを取り入れることでしょうか?高価な薬品を揃えることでしょうか?

image4▲実験に用いられる薬品棚

岩崎先生曰く、(1)安全であること、(2)清潔であること、(3)情報交換をできる場であること、と言う3つの要素が重要だそうです。

少しずつ規制は緩和されてきてはいるものの、細胞やバクテリア、遺伝子等デリケートなものを扱うため、安全面・倫理面ともに様々なルールが設定されています。例えば、文部科学省は、生命倫理上の問題や技術的安全性を考慮して法令を整備しており、ライフサイエンス広場(http://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/kakusan.html)の中でそれらを公開しています。

また、文科省は、実験室を設置する際の条件や実験のレベルごとの実施条件についても細かく規定(http://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/kakusan.html)しています。今回FabCafe MTRLにオープンする予定の新しいバイオラボは、この基準の中で最もハードルの低いP1レベルの施設運営を想定しています。

バイオラボをオープンするにあたって、これらの基準をしっかりと遵守し、ハード面でもソフト面でも、安全で清潔な場をつくる仕組み作りを行うことが重要なようですね。

image5▲実験中の様子

ただ、沢山のルールがあるとは言え、DIYで個々人の創造性を生かして作った場が適さないかというとそうではありません。研究室を見学していても、わたしたちの日常に馴染みのあるものが実験に使用されていました。例えば上の写真では、学生が『はかり』を用いて実験をしています。きちんとルールさえ守っていれば、バイオテクノロジーを扱うことに対して恐れる必要はないと言えそうですね。

ここからは、主なインフラと実験機材の紹介をしていきます。まず、ラボに必要なものとして筆頭に上がってくるものが、水道です。安全で、かつ、清潔な環境を保つためにも、浄水と水道水のどちらも利用できる環境がバイオテクノロジーを扱う研究室には不可欠なのです。

image6▲研究室内の水道と、わたしの右手

その次に必要なのものは、作業をするためのスペースと、作業に必要な薬品や機器をしまっておく棚です。ワークスペースのすぐ上に棚が設置してあると、とても作業しやすいですね。

image7▲ワークスペースの様子

また、薬品等の保管のために冷蔵庫も必要です。遺伝子工学の研究者でもあるゲオルグ・トレメル曰く、市販の冷蔵庫でも問題ないとのことで、水道+冷蔵庫と聞くと一気に私たちでも馴染みやすい環境がイメージできました。

image8▲オートクレーブ(高温高圧蒸気滅菌器)

image9▲遠心分離機とインキュベーター

BioClubの活動のひとつである、BioHackAcademy(以下、BHA)のメンバーで製作中の機材も発見しました。撹拌器、遠心分離機、温度を一定に保つことのできるインキュベーターや、無菌状態をつくるクリーンベンチです。これらの機材は2016年6月4日に開催予定のBHAメンバーによる卒業制作発表会では、DIYで制作したこれらの器具も紹介する予定です。

岩崎先生はご自宅にもこのようなマシンを設置しているらしく、そのほとんどがYahoo!オークションなどで揃えたものであるとのことでした。バイオテクノロジーを扱うにあたっての様々な「規制」を除いて、バイオ実験は意外にも、私たち一般人にもアクセス可能なものとなっているんですね。

image10▲岩崎先生自宅ラボの様子

今回の訪問では、バイオラボの開設に向けより具体的なイメージを持つことができたと同時に、多様なメンバーの集まるオープンな場をつくることの意義を再認識することができました。岩崎研の皆さま、ご協力ありがとうございました!

P.S.
訪問の終盤、岩崎先生が実験的に培養している面白いカタチの藻を見せて頂きました!その辺にあるごくごく一般的な池から採取したものだそう。こういった実験的な取り組みから岩崎先生の美しい作品が生まれるのかと思うと、とてもワクワクすると共に、改めて、いつも予測不可能な行動をしてくれる「生物」を扱うことの面白さを感じることができました。

image11▲池から採取した藻を培養。

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BioClubは、日本において黎明期に当たるバイオテクノロジーの領域を盛り上げるべく、多彩な領域のプロフェッショナルを集めたミートアップ形式のイベントを行っています。
3回目となるBioClub Meetup vol.3では、BioClubにおける実践型の実験的プロジェクトであるBioHackAcademyの受講生による成果発表イベントと展示会を行います。

【イベント概要】
Bio Hack Academy Graduation Show 〜 誰もがBioをハックできる時代をつくる〜
日時:2016年6月4日(土)13:00-16:00
会場:FabCafe MTRL
〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1丁目22−7 道玄坂ピア2F
https://mtrl.net/shibuya/events/bioclub-meetup-vol-3/