• EVENT REPORT

伝統工芸の固定概念をとりはらって考える – 黒備前・素材としての陶器のかたち –

MTRL KYOTOではさる8月20日、岡山より備前焼作家の内田和彦さんとプロデューサーの高橋真一さんをお招きして、イベント 黒備前・素材としての陶器のかたち ~ 同時開催展 「陰翳礼讃 ~暗闇から五感で体験する」を行いました。

備前焼ブランド”黒(KOKU)”の新しい展開

170908_kurobizen01

この日の主役となるマテリアルは”黒(KOKU)”というブランド名がつけられた黒い備前焼。伝統と格式のある備前焼の文脈を受け継ぎつつ、黒の微細な表情とコントラストを追求し、均質で再現性のある造形を行うことで「製品やものづくりの素材としての備前焼」の可能性に挑戦する、新しいコンセプトを持つ陶器です。

170908_kurobizen02
170908_kurobizen03


MTRL KYOTO ではあえて「製品」としてではなく「素材」として想起ができる、板状・球状・塊状の黒備前を常設していますが、この日は内田さんの工房からお皿・マグカップ・ぐい呑みなどの製品が持ち込まれ、二階の板の間にて展示販売がされました。

170908_kurobizen04
170908_kurobizen05

薄灯りで備前焼を五感で体験する

170908_kurobizen06

展示会場の隣の和室では特別展示「陰翳礼讃 ~暗闇から五感で体験する」を開催。谷崎潤一郎の同名の小説の世界観をベースに、LEDの仄かな薄灯りしかない暗室の中で、聴覚・触覚・味覚・嗅覚をとおして、黒備前の豊かな表情を感じ取ってもらうための試みです。過去に実施されたイベントをMTRLの空間に合わせてアレンジしました。

170908_kurobizen08

170908_kurobizen09

170908_kurobizen10

岡山県外出身の陶芸家が向かい合う備前焼ブランド

17時から行われたトークセッションには、京都・大阪だけではなく岡山や名古屋など遠方からも約20名の参加者が集まり、陶芸家内田さんによるお仕事の話と、プロデューサー高橋さんによる”黒(KOKU)”の誕生とブランディングのお話を伺いました。

170908_kurobizen11 170908_kurobizen12

内田さんからは、ご自身が静岡県出身で別の業界から備前焼の世界に入ったこと、世代を跨った備前焼作家の仲間とサークルと結成し相互に刺激を受けながら毎年個展を行っていること、器としての用途に拘らずに自分が作りたいものを日々試作していることなどのお話を。

170908_kurobizen13

岡山を中心にフードマーケットやイベントのプロデュースを行う高橋さんからは、陰翳礼讃をテーマとしたイベントを手がける中で内田さんと黒備前に出会い”黒”のコンセプトが生まれた話、日本人(的な人が)持つ繊細な美意識をどうやって新しい焼物のかたちに反映させたか、などのお話が展開されました。

170908_kurobizen14
170908_kurobizen15

会場からは、材料となる土選びのこと、黒の価格設定のこと、海外マーケットへの展開のことなどの質疑応答が繰り広げられました。

備前焼を素材として取り込んだ短編仮面舞踊

170908_kurobizen16

後半のディスカッションに入る前にパフォーマンスの披露がありました。

演者の中心となるのは舞台作家・役者の篠田栞さん(田○田(たぽた))と、ロシア連邦トゥバ共和国に伝わる伝統的唱法「ホーメイ」歌手の和田史子さん。

170908_kurobizen17 170908_kurobizen18

演目は「鬼の唄-黒の生産性についての考察-」
黒備前をイメージして作られたこの日のためだけのオリジナルの台本です。

170908_kurobizen19

黒備前の端材を叩いたり、引掻いたりして放たれる音色は、素材の厚さや部位、焼き加減によって異なる表情を見せながら和田さんの唄う声と溶け合います。


そして、舞踏を演じる篠田さんが纏うこの日のために作陶された黒備前のお面二種類は、スポットライトの光と水滴による湿り具合によって多彩な表情を私たちに見せてくれました。

170908_kurobizen20

170908_kurobizen21

170908_kurobizen22

15分ほどのパフォーマンスを息を呑みながら見守りながら参加者は、伝統の概念に縛られない自由な発想ができることを体感しました。

170908_kurobizen23

素材としての備前焼を考えてみる

短編仮面舞踏で十分に脳に刺激を与えたところで、参加者の方々に備前焼の固定概念に囚われない”黒(KOKU)”の用途を考えスケッチしていただきました。

このたびの”黒(KOKU)”でのチャレンジを「芸術作品としての備前焼から均質で再現性のある製品素材としての備前焼への転換」だと考えている内田さん。「職人のわたしを”陶芸の3Dプリンタ”だと思って作って欲しいものを考えてみてください」と参加者の自由な着想を促しました。

170908_kurobizen24

170908_kurobizen25

170908_kurobizen26

その結果アイデアとして、メガネのフレーム、天井、絵の具、蛇口、路面電車(岡山の?)、などなど参加者の多彩な”素材としての用途”が会場に張り出されました。書き出されたアイデアを会場に貼り出してピックアップしながら、備前焼の世界の拡がりに思いを馳せながらディスカッションを楽しみ、この日のイベントは終了しました。

当イベントのテーマ素材である黒い備前焼”黒(KOKU)”はMTRL KYOTOで常時展示中です。また、”黒(KOKU)”を使っての試作に関してはこちらまでお問い合わせください

170908_kurobizen27

170908_kurobizen28

170908_kurobizen29

MTRL KYOTO では、既存の用途やマーケットに囚われない、ものづくり素材の新しい用途発見やプロトタイピング(試作)を支援しています。詳しくはお問い合わせください