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しさくをとおしてたいわする。織の可能性を飛躍させるプロトタイプたち – YOSANO OPEN TEXTILE PROJECT

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異業種のクリエイターたちが与謝野町を訪れ、若手の織物職人とコラボレーションしながら、丹後ちりめんをはじめとする与謝野の「織り」の技術についてリサーチとプロトタイピング行う YOSANO OPEN TEXTILE PROJECT

しさくをとおしてたいわする、たいわをとおしてしさくする

このプロジェクトは「商品開発」を目的としているわけではありません。職人、クリエイター、サポーター間で、失敗も含めた実験=対話を繰り返すことで、織物の可能性をみんなで模索していくことがこのプロジェクトの重要なポイントです。

1月から始まったこのプロジェクトも、リサーチツアー、アイデアソン、実験、中間ブラッシュアップと、短期間で多様な発散・収束を繰り返してきました。そのプロセスを通じて生み出された最終アウトプットを各チームごとにご紹介します。

#1 イレギュラー班:「不均一」から見える新たな視点

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イレギュラー班が定めたキーワードは「不均一な糸」。今までの工程やあたりまえの事をみなおすことで、与謝野町でしかできない、新たにいいと思われる物があるのではと、均一に織る事、素材をあえて別角度から再確認、実験をおこない、可能性を模索したプロトタイプをつくりました。

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ボンドでコーティングされた糸のマテリアル。水滴のようなニュアンスを持ちます。

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人工的結び目(玉結び)を作った糸で織られた試織

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与謝野町の香河川で撚った柞蚕糸群をアイロンで乾燥。枯葉。

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身近なもの(ダンボール)を織物と捉え、縦構造から横構造をぬきさったもの。

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段ボールの波形素材を縦糸ととらえ、高岡さんの横糸をとおしたもの。

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紙をくしゃくしゃにまるめ、できた不均一なしわを縦糸とらえ、横糸をとおしたもの。

電話やチームtumblrなどでかなりコミュニケーションの多かったイ)レギュラー班。それぞれが「まずやってみる」を念頭に、それぞれがもつ環境(与謝野町や大阪の風土ふくめ)、素材を選び手をうごかしできた結果(実験物)をもちより検証を繰り返しました。

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このプロトタイプの活用方法として、素材である糸を不均一にしたり、別のものを大きい範囲で織としてとらえてみる実験をくりかえすことで、すこしづつ自分たちの固定概念をほぐしている。その先にある機械自体(シャトルなどのパーツふくむ)の色、形、機能などを再検証もして行けると感じています。

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実験の中で失敗を繰り返してきた経験が、チームメンバーのコメントにも表れています。

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正直まだ見えてきていませんが、経験から想像のつくことをしたり、明らかに無理だなと言ってやらなかったりすると、この機会ではあまり作り手としての伸び代がないと思ったので、出来る・出来ないは置いといて挑んでいますがやっぱり難しいです笑。すごい無茶ぶりだなと思う内容でも、取り組んでみると勉強になるもんですね

― 与謝野町:高岡操機場 高岡徹さん

このプロジェクトへの参加は《織物》を解きほぐして考えるきっかけとなりました。
織るという行為、絡むという現象。創意が生むもの、自然の秩序から生まれるもの。
縦糸と緯糸が織りなす、空間。春からは織機も学び、思考を深めていきたいと思います

― 与謝野町:地域おこし協力隊 原田美帆さん

「わかっている(つもり)」という事をどうやって、再度手を動かし物としてだしてみるのか。機能や、用途等からだけから、スタートするのではない試みが、素材自身の見方をかえてくれた。与謝野町の方々の、質を大切にしているという芯があるからこそ、柔軟に話し合い、実験にも取り組めるという姿勢に刺激をもらった。今後も一緒に走り、小さな再確認、再検証をつみあげることで、与謝野町でしかうまれない物をみてみたいです

― プロダクトデザイナー 吉行良平さん

 
 

#2 パターン班:「粗織り」が作る、不思議なカタチ

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パターン班が定めたキーワードは「粗織り」。分業体制の各工程を見直す中で、機織りからセリシン取りの精錬工程に未だないパターンを発見したのがきっかけで、生機(きばた:織機から織り上がって外したままの状態)から精錬を施すことで縮むことを肯定した、縮ませることを前提とした素材開発のプロトタイプを作りました。

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羽賀さんが作った粗織物。手で力を入れると織組織が歪みます。

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粗織物をランダムに拡張させ、ドーム型に形状記憶させた織物。

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粗織物でうねるドレープをかけたワンピースのサンプル。

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粗織物を使用し、引っ張ったりして形状を変化させた靴のインソール。

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粗い織物を力をかけたのちに精錬すると、独特のドレープが現れます。

Facebookグループで熱いやりとりを交わしたパターンチーム。羽賀さんからは織りの組織構造などの技術的なアドバイスをテストを行ったうえでいただき、今井さんからはちりめん博物館にある生地やお客さんのフィードバックについてのコメントをいただくなど、盛んに対話が行われました。

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今回の期間では縮ませるための素材づくりが発展してスリップしやすい組織にまで発展しました。今後の活用方法として、スリップしやすい組織がもたらす過剰なまでの縮みやドレープを積極的に取り組んだテキスタイルができるのではないか、と考えています。例えば自分でドレープや縮みをカスタムメイドできるような製品もできるかもしれません。

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緩やかな雰囲気の中で細かく観察・検証を繰り返してきたチームメンバーのコメントです。

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普段の仕事ではなかなか交流できないクリエイターさん達と意見を出し合い、和装業界に携わっているだけでは考えつかないアイデアやモノづくりに対する考え方、小幅織物の新しい可能性を感じ、学ぶことができました

― 与謝野町:羽賀織物 羽賀信彦さん

プロジェクトに参加させていただき、様々な方と交流&ディスカッションすることが出来、多様な観点、より深い観点から改めて丹後ちりめんについて見直すことが出来たというのが最も大きく得られた点かと存じます。

私は現在、主に観光地としての販売という業種から丹後ちりめんに携わっておりますが、製造の現場で活躍してあられる与謝野の職人の方々、繊維業に携わる与謝野町外のクリエイターの方々とウチから、ソトから見る丹後ちりめん、絹の素材として特性など活発な議論が出来、大変刺激になりました。素材を分解して絹糸、果ては蚕から着眼し、縮緬の製法、商品と改めて絹の特性を考えるきっかけとなり、大きな知識を得る場ともなりました。

物販の現場では全国から丹後縮緬の問い合わせが寄せられますので、今後、丹後ちりめんそして絹について商品知識が生かしていければと存じます。

― 与謝野町:今井織物 今井裕二さん

産地での開発は時に技術・技法や製品から始まることが多く、固定概念から脱した発案は非常に力のいることだと思います。一方で、今回のように工程を見直すことから始まるプロジェクトは、いい意味で横道へ逸れるやり方が見えてきました。「普段はやらないんだけど」が積み重なり新たな製品をつくり続けていたかつてのように、普段はやらないことをあえてやってみることで、改めて、与謝野町のものづくりにかける想いが見えてきたように思います。

― デザインリサーチャー 浅野翔さん

#3 デジタルと織班:音と文様の関係性

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デジタルと織班のキーワードは「音の紋様」。デジタルによる「織物のパーソナライズ」を軸に、実験を経て知った・発見したものを元に、Processing(デザインのためのプログラミング言語)で音を形にするというアイデアを活かして、自然に音から紋様を作るやり方と、紋様から音を出すやり方をそれぞれ考え、プロトタイプづくりを行いました。


色から音を読み出す装置。Arduino(小型マイコン)とカラーセンサーを用いて対象の持つ色を読み取る機能と、入力に合わせて設定した 音を圧電スピーカーで出力する機能を持ったものを製作。対象物の 色を測定し RGB の各数値が当てはまる条件に応じて音が鳴るようになっています。

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織物のレコードのプロトタイプは到着次第掲載予定です。

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また、音以外にも蚕を飼育し、繭を作る枠(まぶし)の形状を3Dプリントし検証。

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透き通るような形状のまぶし。

Facebookグループでポイントに絞った交流を行ったデジタルと織班。由里さんには紋様データのデジタルフォーマットや織機の仕組みと技術についての情報を提供して頂き、プロトタイプ製作においては織物レコードの製作テストを行いました。

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音から紋様を作る実験と、平行して行っていた染めの実験には親和性があることにも気付きました。今後は、色や柄として従来にないものを作ることが出来る製法になるかもしれません。音から作る紋様を始めとして、今後は新しい紋様の生み方が出来たり、新しい絹織物の価値を作ったり出来るのではないか、と考えています。(例えば織の文様を読んで音が流れる贈り物として。逆に赤ちゃんの声を文様にした織物など)

デジタルと織り班 試作・成果物報告(PDFファイル)

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悩みながらもテクノロジー、蚕と難しい分野に挑み続けた結果がコメントに表れています。

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歴史があり、基幹産業として存在する与謝野町の織物産業は、昔のかたちを残している一方で日々技術的な革新を模索している面もあるということを実感しました。緻密なミクロの作業の中で職人さんが発見することがあれば、私のような人間がどこかから持ってきたアイデアが何かの拍子に形になることもあり、そのためにはやはり出来る限り幅広く、多角的視点で観察することが大切なのだと再認識しました

― ファブディレクター 高松一理さん

面白かった点は年齢の若い人たちでいろいろ考えられた点で、自分が結構凝り固まった考え方をしているんだなと反省させられました。これから活かせるかどうかは、まだまだ分かりません。実際仕事していく中でこの経験が役に立てばいいなと思っています

― 与謝野町:由里機業場 由里直樹さん

次ステージはプロトタイプをさらに飛躍

プロジェクトでは職人、クリエイターだけではなく様々な方に関わっていただきました。

一般参加者の方々をサポーターとして捉え、メッセージムービーもいただきました。

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YOSANO OPEN ROOM には与謝野町長をはじめ様々な方にお越しいただきました。

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それぞれのチームで行われた実験と想いを込めたプロトタイプをもとに、春以降はさらにアイデアを飛躍させていくような仕組みを構築していく予定です。

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最後にコンセプトディレクターとして一緒にプロジェクトを進めた、水野大二郎さんからのコメントをお届けします。

2016年1〜3月にかけて、本プロジェクトは与謝野町の職人さんとデザイナーたち、そして興味を持ってワークショップに参加してくださった人々の協働によるアイデア創出と試作品制作を行いました。

枠に囚われない発想を生み出すための練習。
様々な人との協働を通したつながりを構築。
他者の視点を通して、自身の活動の再認識。

多様な試作品は「製品としての完成度」を高めるためではなく、「製品の魅力・アイデア」を高めるためであり、それは以上のような「視点の形成」を前提に展開されました。

本プロジェクトは、実装可能な製品・サービス設計に至る長い旅の途中でひとまずの終わりを迎えます。しかし、外部からデザイナーが来て、去るだけでは何の持続性もありません。与謝野町で活動する皆さんが新しい「視点」を持ち、新たな活動に挑戦したくなるようにするために、引き続き協働による製品・サービス開発にむけて微力ながらもお手伝いできればと思います。

― 慶応義塾大学環境情報学部准教授・芸術博士(ファッションデザイン) 水野大二郎

織りの可能性に挑戦したプロトタイプと時を同じくして、与謝野ブランド戦略のWebサイトが公開されました。これからも職人、クリエイター、与謝野町民、見守っていただいている全ての方々と一緒に、ワクワクできるウネリを生み出せるようこのプロジェクトを育てていきたいと思います。

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YOSANO OPEN TEXTILE PROJECT