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オリジナリティを生み出す鍵は「コード」にあり!?新しい発想を生み出すためのワークショップ開催レポート

「いかにしてオリジナルを生み出すか」。クリエイターに限らず、ものをつくるすべての人に課せられる永遠の問いかもしれません。インターネットがインフラとなり、情報があふれかえるいま、様々な作品に触れることができるようになりました。その一方、オリジナリティを生み出すのは難しくなったのかもしれません。自分の作品を「パクリ」ではなく「オリジナル」にさせるためにはどうすればよいか。改めて考える機会になればと、ひとつのワークショップが行われました。

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2016年1月14日、MTRL KYOTOにて「温故知新マインド forクリエイターズ-「世界観」のつくり方-」を開催しました。ゲストはマンガ「スラムダンク」のスタッフをはじめマンガ家、イラストレーター、プロデューサーとして幅広く活躍されている野口周三さん。

野口周三

野口周三さん

京都生まれ。同志社大学在籍時に、第29回集英社「週刊少年ジャンプ赤塚賞」にて準入選を獲得。その後、週刊少年ジャンプにて記録的な大ヒットとなった「スラムダンク」(井上雄彦著)のスタッフとして活躍。スーパージャンプ誌上では作品賞を受賞するなど、マンガ家としても著作を多数発表する。
またマンガ以外に、デザイナー、イラストレーターとしても活動し、映画・アニメのプロデューサー・ディレクター、脚本家としても活躍。

現在は大阪成蹊大学芸術学部にて教授を務める傍ら、宝島社のライトノベル作品のコミカライズを担当するなど、仕事は多岐にわたっている。

前半は野口さんの自己紹介からスタート。学生時代のテレビ企画からはじまり、マンガ家として活躍、その後イラストやCM制作、映画やアニメのプロデュースなど経験され、特定の分野に限らず、それぞれの領域で新しいものをつくりだしてきた、まさにマルチ・クリエイターという印象です。

他人と違う発想とは

本格的なワークの前に、まずはウォーミングアップから。お題の絵に「人と違った発想」をつかって、いかに「おもしろい絵」にするかが課題です。人気サイト「ボケて」やウォール・ストリート・ジャーナルの「カートゥーン大喜利」ではお題の絵に対してテキストを追加して状況を変化させますが、今回は絵に描き加えます。お題の絵は向かい合う一組の男女。そこに背景や小道具などを描き加え、ドラマチックに仕上げます。ただし、表情やセリフを書き加えることはできません。テキストではない分、世界各国で同じ題に取り組めそうです。

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さて野口さんが教鞭をとる大学の授業では例年この課題に取り組んでもらうそうですが、「人と違う答えを」と指定したお題に対してどの程度オリジナルのものが出てくるのでしょうか。

全くかぶらなかった案を出したのは受講生全体の5%程度。それ以外はほとんどかぶるモチーフを使っており、最も多い2案を出した受講生は全体の40%にものぼるそうです。筆者が考えた案は最多案だったので、がっかり。野口さんは学生に対して「そんなことでクリエイターとして生きていけると思ってるのか」と檄を飛ばすそうです。とても耳が痛い……。とはいえ同じ絵という素材から「新しい発想」ができることを裏付ける結果でもありました。

ではなぜ、他人と発想がかぶるのでしょうか。それは日常から触れているものに対する分析が足りないからだ、と野口さんはいいます。それはどういうことなのか、ワークを通じて説明が続きます。

まずは「コード」を意識しよう

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ここからは参加者のワークです。お題は「あの国民的大怪盗のアニメ作品の新しいストーリーをつくれ!」といえば、何の作品かおわかりいただけるでしょうか?

ワークに取り組むにあたり野口さんからヒントが与えられます。それは作品の「コード」を意識するということ。「コード」とは和音「chord」と法典・規則「cord」などの意味がありますが、今回の「コード」は音楽のコードと同じく、「お約束」のようなもの。音楽ではコードを並べていくことで曲の大枠を作りますが、マンガやアニメでも様々な「お約束」を組み上げ、転換することで、オリジナルの作品が作られるといいます。

たとえば今回の題材になるあの大怪盗のシリーズには多くの作品がありますが、「怪盗仲間や彼を追う刑事などの個性的なキャラクター」や「大怪盗がなにかを盗む」という点は、どの作品にも共通しています。多様なテーマを扱いながら、同じシリーズとして受け入れられる理由は、違うテーマを扱っても「お約束のコード」を外さないからだと野口さんはいいます。

「コード」から「オリジナリティ」を生み出す3つのポイント

「コード」からさらにオリジナリティを生み出すにはもう一手間かける必要があります。それは「コード」を活かして大枠の流れをつくったうえで、そこからさらに「ずらす」「組み合わせる」「逆転させる」などの転換を加えること。新しい発想をするといいながら、全てをゼロから作り出すことは難しいです。とはいえ「コード」を組み上げるだけではいわゆる「パクリ」になってしまいます。転換されていないために「同じように見えてしまう」作品がたくさんあると野口さんはいいます。

では「コード」と転換の方法を踏まえて、ワークにチャレンジ!

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筆者もグループに入ってワークに参加しましたが、アイディアをなんとかひねり出して時間を使ってしまい、ストーリーの描き方から登場人物の活かし方を設定するまでには至らず、中途半端な企画案に……。でも、ぜひこのストーリーが実際のアニメ作品が生まれたら……、なんて妄想してしまいました。

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発想の新しさ、キャラクターの活用、ストーリー構成の工夫など、マンガやアニメの作品にするためには考えなければいけないことがたくさんありますが、それこそがプロの世界の厳しさであり、おもしろさであると実感するワークでした。

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なんども触れて染み付いたコードを活かせ!

どうすれば「コード」を自分のモノにできるでしょうか。クリエイター志望の方から「たくさんの作品に触れる必要があるか」とよく質問されるそうです。野口さんは「繰り返し何度も触れてきた作品があるか」がより重要だと指摘します。

「触れる作品の数が多いだけでは、いい発想がつくれるとは限らない。むしろ強い思い入れのある、大好きな作品があるか、がより大切です。何度も繰り返し触れることを通して、自然とその作品の「コード」が染み付いていきます。1つの作品の「コード」がわかるようになると、他の作品の「コード」もわかるようになっていきます。」

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たっぷり2時間のプログラム終了後も、会場では参加者同士の熱いトークが続きました。同じテーマでワークに取り組み、他の人の発想にも触れられるのはこうしたリアルイベントならでは。筆者もこのワークに参加してから、文章を読むときに「コード」を意識するようになりました。「コード」を活かした作品づくりは、マンガやアニメに限らず、様々な分野で活用できると思います。

MTRL KYOTOではクリエイターの発想のために、今後もこうしたイベントを展開していくそうです。筆者としてはクリエイターにとってのPDCAとも言える、ブラッシュアップについてのワークショップを開催していただきたいです。ぜひお願いします。

文責:水口幹之

水口幹之

1992年東京生まれ。ライター・インタビュアー。2010年より京都に移住。地域コミュニティやものづくり分野における編集をテーマに執筆やイベント企画などを行う。